令和3年度秋季シンポジウムの報告

 12月12日(日)に神戸学院大学ポートアイランドキャンパスにおいて、「ワールドマスターズゲームズ2021関西の開催による兵庫県の生涯スポーツ振興に向けて」と題し、秋季シンポジウムが開催されました。
 本シンポジウムは、兵庫県内におけるワールドマスターズゲームズ2021関西(WMG2021関西)の開催動向に注目し、主催・競技団体、選手やボランティアとして過去から現在への関わりに踏まえ、実践的・学問的な観点から生涯スポーツ、マスターズスポーツの現状や将来について、兵庫県実行委員会の立場から榊丈直氏(兵庫県教育委員会事務局WMG2021推進課課長)、競技団体の立場から尾上俊雄氏(兵庫県オリエンテーリング協会会長)、選手の立場から谷所慶氏(関西大学人間健康学部准教授)、ボランティアの立場から彦次佳 氏(和歌山大学教育学部准教授)の4名をパネリストに迎え、情報提供と質疑応答によるディスカッションが繰り広げられました。
 初めに登壇された榊氏からは、兵庫県におけるスポーツ振興の経緯からスポーツ環境の整備・拡充、地域スポーツクラブの機能強化、部活動改革など今後の方向性が説明されました。そして、WMGにおける実行員会の取り組みについて、大会開催決定までの経緯や大会自体の概要や特徴、兵庫県内における開催競技種目や組織委員会や開催府県政令市実行委員会の推進体制の紹介が行われた上で、県内における広報・PR活動、リハーサル大会の報告がなされました。さらに、取り組みの一例として「スポーツ休暇」の創設や「Do Sports 休暇」の推進やボイランティア休暇の適用拡大と兵庫県職員への対応について紹介いただきました。
 次に登壇された尾上氏からは、オリエンテーリングの競技自体についての紹介や世界マスターズオリエンテーリング選手権(WMOC)とWMGの関係性からWMG2021関西のオリエンテーリング競技をWMOC2021として日本での開催を決定した経緯について報告が行われました。そして、WMG2021関西に向けての活動や延期に伴う2022大会への参加者獲得のために国内外において、オリエンテーリング競技自体のプロモーションやWMG関西大会の広報・キャンペーン活動の取り組みについて紹介いただきました。
 3人目の登壇者である谷所氏からは、自身が選手として参加したWMG2017オークランド大会での硬式野球種目を中心に競技の運営・会場の様子や実際に行なわれたルールや試合スケジュール等の紹介が行われました。加えて、研究者の視点よりマスターズスポーツイベント参加者の練習量について着目し、オーストラリアマスターズゲームズ2019での参加者を対象に実施した調査から報告が行われました。調査より、参加者の平均として1日当たりの練習量は1.5時間であることや、競技歴は30年と20代前半から継続して実施している者が半数を占めることなど、マスターズスポーツ参加者の普段の競技への取り組みについて紹介いただきました。
 4人目の登壇者である彦次氏からは、自身がボランティアとして参加したWMG2005エドモントン大会での経験を元に、競技者としては参加できない若年層がボランティアで参加することによって享受できる数多くの可能性について紹介いただきました。さらに、WMG2021関西大会への期待として生涯スポーツ・熟年スポーツ文化に若い年代の人たちが触れる機会を様々な形で提供することにより、生涯を通してスポーツを楽しむ文化や環境の形成のための素地の一因となると述べられました。  
 最後に、マスターズスポーツによる兵庫県のスポーツ振興・推進のための課題や将来への展望について、それぞれのパネリストの立場からの回答を得ながら活発な意見交換が実施されました。そして、コーディネーターを務められた谷めぐみ氏(湊川短期大学幼児教育保育学科准教授)より、延期開催が予定されているWMG関西大会に向けた、新たな生涯スポーツやマスターズスポーツの可能性の拡がりについて言及され締めくくりとなりました。
 今後とも、今回のようなシンポジウムなどの機会を通じて、兵庫県内における今後のマスターズスポーツの普及や次世代に向けての生涯スポーツ振興の推進に寄与していくことができれば幸いと考える次第です。

(関西大学 松村雄樹)

 

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